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よかれと思って 本編

自分が大事な相手に、何かをしてあげたい時

当然、自分が良いと思う事をしてあげたいですよね

『よかれと思って』

 

 

 

 

私、カワハラの家は片親で

母親が自宅で理容師をして、私と姉を専門学校まで卒業させてくれました

 

私の保育園卒園と同時に

浮気で家庭内別居状態だった親父と離婚成立

ちなみに、オヤジは私が低学年のウチに、養育費をブッチぎる素敵ぶり

 

家に帰れば、常に母親が居ましたが、常に接客中

30代で一度、血管を詰まらす系の病気をしちまってて、基本は病弱

でも、すげえ強いヒトです

 

大体は七時過ぎくらいまで仕事してましたが

終われば最初にダウンしちまうので

体調によっては

小学校低学年の時分でも、晩御飯を夜の12時に起こされて食べる

それは我が家の普通でした

 

 

子供の相手をする気力体力までは、足りなくて仕方なし

仕事する、飯作る、寝て回復

以外に割く余力なんて、無くて当たり前と、当時から理解してました

 

 

親に構って欲しいという気持ちも

せめて、たまに

例えば『仕事が終わった後、一緒に花火をしたい』という約束を

『疲れてしまっていて、できない』

といわれたときに、そういうのも二度と言わなくなりました

 

 

思い返して気付きましたが、親を親として、というよりは

触れ合いだとか愛情的なモンを求めるのを、その時に諦めたんですな

なにせ仕方ないからね

 

 

六歳はなれた姉貴は居ましたが

イイ感じにふて腐れたキャラになってたから

余程、機嫌でも良くない限り、弟をウザいと思ってたようです

 

私も、自分が悪いか悪くないかはおいても、良い弟でもなかったでしょうし

 第一、自分に余裕もないのに、他人になど構っていられますまい

 

というか姉貴の方が

両親がそろっていた時期の記憶がある分、私よりキツかったのでしょうし

私は、物心ついた瞬間からオヤジが居なかったようなもんだし

 

 

と、いうわけで

 

家にいても、基本は一人でした

いんや、外に行けば人並みにお友達は居たから

家に帰ると一人だった、かな

 

 

別に、誰を責めてるわけでなく

憐れんで欲しいわけでなく

そんなふうに、一人だったわけです

ただの事実

 

 

んでまあ

そんな私も、ある日、家で一人ではなくなりました

猫を拾っちまったんです

乳離れ未完了くらいの子猫でした

 

手間はかかりましたし、かけさせもしたなあ、この時は

 

 

なんとか、自力で餌食って動き回れるようになりましたが

私にベッタリの猫になりました

 

学校から帰れば入口に居るし

二階の部屋から一階のトイレに行くときは、必ず着いてくる

夏は枕の上で、私のアタマに巻き付くように

冬は布団の中に入ってくる

仰向けに寝てれば、必ず胸の上に

 

 

こんなのが、二年弱続きました

 

 

そいつはオスで脱走癖があり

どんなに防ごうとしても、どこからか脱走しやがりました

田舎でしたが実家は国道沿いで、危ないのですが

 

10度以上も脱走しては生還するうち

心配ではあるが、大丈夫だろう

と、マヒしてきた頃

 

一週間を越え、10日を越えても、ヤツは帰ってきませんでした

 

 

当然ションボリしてきたトコロで、親から

『特別に小遣いをやろう』

 

と、言われたそうな 

 

断る理由も無かったので、貰ってゲームなど買いましたが

それで遊んでても楽しくはない

 

頭の隅では猫の心配をしていて

死んでしまったのか、もう戻ってきてはくれないのか

 

 

それが一か月もした頃か?

親に言われたのですよ

 

『あの子は、もう死んでいる』

『近所の人に教えられて、回収してきたのだ』

『とっくに火葬して、ペット用の共同墓地に埋葬した』

『見せられる姿ではなかったし、悲しませると思った』

『実は共同墓地に葬る前、気づかれかけた』

『車庫の中が臭うと言われた時は、肝を冷やした』

 

 

おお

書いてると、思い返してみると

あの頃の気持ちがそのまま甦るもんだなあ?

 

なにに、かはわかりませんが、頭にきたものです

 

 

 

小遣い渡されて、貰えるならそれは喜んで貰う自分

 

無理な話ですが、臭いの原因を追究しなかった自分

 

小遣い渡して誤魔化せると思った親

 

取り返しがつかないとしても

お別れをする機会?権利?すら、勝手に奪い取った親

 

 

 

今、あらためて思う事は、やはり

何か秘密にするならキッチリ墓までもってけや、という事

その覚悟もない、表面だけの優しさなんて

無益なばかりか有害ですな

 

居なくなっただけなら、悲しいだけで済んだんだよなあ

大事な事を、知らないうちに奪われていた

それをしたのは親だったなんぞとは、知りたくもなかった

 

 

 

 こんな自分だが

大事なモンだったんですよ

家で、ずっと一人だった自分と、一緒に居てくれた

 

 

それが 

私を悲しませたくなかった、親心だとは理解できますよ?

別にそんな事まで否定する気はありません

 

 

でもよ?

して欲しかった事じゃあ、ないんだよな

なんか、そんなんばっかだったのよね

オフクロは、してほしいわけじゃない事ばかり、力いっぱいやってくれてた

 

 

 

私は、猫との思い出なら山ほどあるが

親と話した、何かした記憶なんて、数えるほどしかねえや

 

だから

親が私の事をちゃんと知る機会も余裕もなかったし

私の方は、そうだなあ

伝えたくて、見て欲しくて、何かして

結果は悲しい記憶になった事ばかり

それもいつの間にか諦めた

 

 

たぶん、お袋はお袋でなくて、親父だったんですな

正確には、八割親父で二割お袋くらいかな?

家を支えて、家族を守る、成人まで育てる

メシは、意地でも手作りでちゃんとしたモノを食わせる

 

 

でもよ?

やっぱり、して欲しかった事じゃあないんだよな

すこーしずつ、違ったんだわ

 

メシは手作りじゃなくて

やっすいパンだってなんだって構いやしない

あの頃、たまにでも

一緒に花火をして欲しかったんだよね

 

 

悲しい事だって、ちゃんと越えられると信じて

キチンと教えて欲しかった

この、秘密にしようとして秘密にしきれなかったエピソードは

一回じゃねえしなあ

 

 

 

結果

母親を、自分にはとてもやってられない偉業を成した人間

として尊敬している

それを侮辱したあのお客さんは許してやらねえが

 

 

でも、嫌いっつうのとも違うのですが

好きじゃあないんだよね。母親を

 

 

就職して

給料で指輪など贈ったりもしてみた

心はこもっていなかったが、そういう事をするものだ、とはよく聞くし

形からでも何か変わるかと思って

 

 

でもまあ

母親は喜んでくれたようだが、私のテンションは変わらない

喜んでもらえたという喜びが、母親を相手には湧いてこない

お客さん相手には普通に湧いてくるんだがなあ

 

 

どうやらこんな感じに、なにか欠けた成長をしてしまった

めっちゃ闇属性ですな

 

 

こんな話を、わざわざ親にする気もない

お前、失敗してたんだぜなんて、あれだけやってくれたヒトに

言えるハズもないわな

 

 

これが私にとって、墓まで持っていく秘密で

これが親との間についた、永遠に消えない、黒い染み

どうにも薄まる気配もなくて、困っている

まー、誰も悪くはなくとも、こういう事もある

 

 

なんつうのか?

親が

自分が昔子供だったからって

自分の頃と同じように、今の子供も感じるとは限らない

 

もし、その余裕さえあるなら

ちゃんと、子供自身の事を見てあげて欲しいと思います

ちゃんと、本人はどうありたいのか?聞いてあげて欲しいと思うのです

 

 

 

私が好きな漫画に

 

勝手に私を決めないで!

というセリフがあるのですが

 

良くできたキャラをした登場人物が、こう応えます

そうか、こうした方が、お前は嬉しかったんだな

 

こういう事です

よかれと思ってした事が、どんな場合にも救いになるとは限らない

 

 

とはいえ、今の自分も嫌いじゃあない

満足か?と聞かれれば、そんなわけもねえんだけど

少なくとも、床屋は妙に自分に合ってるし

一人身だからなー、自分の中の売りたくねえモノは、売らずに済んでるし

 

悪くない

表現するなら、これが一番しっくりくるなあ